水本桂さんは、北大ピアノクラブのOGです。卒業後ヨーロッパに渡り、フランクフルト芸術大学に留学・卒業。その後ベルギーでプロのピアニストとして活躍していらっしゃいます。またご主人のエリック・スロイスさんは、ベルギーのプロオケであるフランダース交響楽団で、ヴァイオリンを弾いていらっしゃいます。フランダース交響楽団の常任指揮者は、日本人の金聖響さんです。
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♪ショパン 小犬のワルツ
ヨーロッパでは1分ワルツというそうです。鳴りだしたとたんにエッと思う。さっきまで鳴ってたピアノと違う楽器みたい。あまりのスピード感に圧倒されます。すごい・・・そして曲が終わっておじぎしたら、横にいるチビのアーロンくんが一緒にお辞儀。かわいらしい!!!
♪ショパン エチュードOp.10-4
のだめで弾いていた曲。始まりからスピードが速すぎる・・・ここからさらに加速するんだぞ・・・一体どうなるんだというような緊張感のままどんどん加速したり転がり落ちたり。最後まで崩れることなく見事にフィニッシュ!すげぇ!!!
♪バイオリンとピアノのなんかの曲
水本桂さんのご主人であるエリック・スロイスさんは、ベルギーのフランダース交響楽団のバイオリン奏者さん。
なんと曲名がききとれませんでした。
曲調としては、物悲しいしっとりした感じ。バイオリンの弦の音が鳴りだしたとたんに、なんでしょうこれは。ゾクゾクっと背筋が震えるような。ピアノの音よりももっとアナログで古い感じの物悲しさ。フッと冷たい空気が首筋に当たったような気がしました。バイオリンをよく知らない自分ですが、なにか感じました。
♪バルトーク バイオリンソナタ終楽章
私はバルトークという作曲家の曲をほとんど知りませんでしたが・・・この演奏はすごかったです。
背筋が凍るような怖いくらいの緊張感が続く演奏でした。なにか別の世界に引きずり込まれそうな、怖い感じ。
バイオリンのことはよく知りませんが、こんな速いパッセージを弾くことが物理的に可能なのかとビックリ。
あまりの緊張感に、聴いていて体が硬直して動けない。気がつけばみんなシーンと硬直しているように見えました。エリックさんと桂さんのものすごい気迫とエネルギーを感じた演奏でした。
♪クロル バンジョーとフィドル
フィドルはバイオリンのことです。少し前にNHKでアイルランドを舞台に葉加瀬太郎が出演して、ダンスパーティーで演奏に参加していました。「フィドルは踊る」という名前の番組だったと思います。どうも、同じ楽器ながら「ヴァイオリンは歌い、フィドルは踊る」と言われるそうです。フォークや民族音楽で奏でる時に「フィドル」というそうです。なんとなく分かる気がしました。この演奏も、聴いていてつい踊りだしたくなるような軽快なリズム。桂さんはアーロンを膝だっこで演奏でした。
余談ですが、桂さんとエリックさんは、前日の晩から本番に備えてアルコールを絶ち、今日のこの演奏を聴かせてくださいました。この震災で混乱している日本に来てくれて、こんなすごい演奏を聴かせてくれる。本当にありがとうございました。ものすごいエネルギーをもらえたように思います。本当に、ありがとう。
♪ラヴェル ピアノ協奏曲 第二楽章
最後はこの曲。2台ピアノで、桂さんがピアノ、オケ伴奏はピアノクラブE・Uさんです。E・Uさんも在学中からとびぬけて上手な方でした。今回は1か月前に「伴奏してほしい」とという無茶な頼みを受けてくださり、見事にやってくださいました。
ひととき、夢の世界に連れて行っていただきました。夢の海の中を泳いでいるようでした。
ああ・・・ラヴェルだなあ・・・
2台がハーモニーかかるところでは、ふわっと宙に浮いて空を漂っていました。なぜかその辺りから涙が出て来ました。今までラヴェルで泣いたことなどない・・・ああ、この曲が聴けてなんと幸せなことか、そんな想いになれた演奏でした。
ずーーーーーっとこの曲ずーーーーーーーーーーっと、続いてくれないかな、と思いました。今日、一番嬉しい1曲でした。
曲が終わった瞬間も、まだ夢見心地で、数秒たってから「ああ、終わったんだ」と我に返って拍手。その間客席みんなシーン。みんな同じように思っていたのかもしれません。夢から戻るのに少し時間がかかりました。
E・Uさん、ムリを聴き入れてくださって、ありがとうございました。おかげで幸福感に満ちた10分間でした。
♪アンコール シューマン:リスト 献呈
水本桂さんのアンコールは「献呈」。
この曲は聴いたことはあったのですが、まともにちゃんと聴いたのは今回が初めてでした。
いい曲だなあ!!!
こんないい曲、世の中にあったんだね。弾いてくれてありがとう!!!
ロベルト・シューマンがクララと結婚する前に、この曲を作曲して捧げたものを、後でリストが編曲したそうです。
しっとりゆったりしたところからは、ささやかな愛や誓いを感じ、激しく盛り上がるところは光り輝く青い空と太陽と希望を思わせます。
人生の行く手に明るい未来を希望を見るような、素晴らしいアンコールでした。
●アフター
演奏会のあとは、アフターです。実はこれを一番楽しみにしていたのかもしれません。
独身組の皆様が持ってきてくださったワインをいただきながら、ユング妻さまやM・Mさんが焼いてくれたピザを食べながら。(会場にトースターが持ちこめるんですよ!すごいでしょう!)
そして、2台ピアノがありますから、ソロ同士でセッションができます。
じゅんちゃんとはめぞん一刻のオープニングテーマを。あと中森明菜の北ウイングやらセカンドラブやら・・・
ZERKIN=Sさんとは2台で銀河鉄道999のテーマを合わせました。この曲ほんっとに好きだったんだよなあ。
ZERKIN=Sさんはさらにギターでちーたんさんと合わせていました。なに弾いてたんだろう???でも、ギターを弾いているZERKIN=Sさんの顔は、もう音楽バカ青年の顔そのもの。いいですね、こういうのは。私も久しぶりに学生時代の自由な気持ちになって、ピアノと戯れました。至福のひと時でした。
宴会将軍の飲みネコさんは、飲むのが仕事ですから終始飲み続けておられましたが、全く正体を失うことなく普通にまたピアノを弾いていました。私はと言うと、みんなに心配されるくらいに真っ赤っかに・・・・でも、飲みたかったんだよ~!!!
その後、飲みネコさんからオクターブが届かない小さな手を見せられました。少し感動しました。本当に小さい・・・今まで私が見た大人の手の中で一番小さい・・・この手でここまで弾けるようになるには、どれほどの練習量があったのかなあと、少しほろっとしました。
気がつけば、横でなにやら体操教室が。かえちゃん、カマキチさん、かちゃんさんが、なにやらヨガなのか新体操なのかよくわからない怪しげな技を披露し合っていました。思わず私も体操部時代を思い出して、バク転やっちゃいました!
もう、ずーっとこのまま飲み続けて弾き続けていたい夜でした。月曜日オレ本当に会社いくのか?とブルーになるくらい。もうサイコーでした。
最後に、水本桂について、少し話させてください。
私は、この世で一番好きなピアニストは誰ですかと聞かれたら、迷わず、「水本桂」と答えます。
それは彼女が上手だからとかプロだからとか、そういうことではなく、彼女の人となり、飾らないストレートで裏表が全くない、そしてものすごく強い心を知っているからです。
演奏会でも触れましたが、彼女は震災後の4月上旬、ベルギーで堀米ゆずこさんと共に、ゲストにマルタ・アルゲリッチを迎えてチャリティーコンサートを主催し、収益金を日本赤十字に寄付しました。
彼女は震災直後から日本のことを心から心配し、自分になにができるかということについて、真剣に考え、そして実行に移しました。もちろん独りでそれをやったわけではありません。あちらでの音楽友達や多くの人の支えで為したものです。でもそんな頼もしい人たちが海外にいて日本を応援してくれている、そう思うだけで、どれだけ勇気がわいたことか。負けてたまるか、頑張ろう、と思えました。
今回、ご主人もヴァイオリンを携えて守谷に来てくださり、演奏を聴かせてくれて、また私はたくさんのエネルギーをもらいました。プロですから、本当は対価を支払って演奏を聴きに行くのですが、ご家族は無料どころか逆に、守谷にヴァイオリンを持ってくるために、日本の国内線航空機内持ち込みができる専用のヴァイオリンケースを買い求めて、ついでもないのに交通費自腹で守谷に来て下さり、前日からアルコールを絶って、今回の演奏を披露してくださいました。
もう、ありがたいという思いしかありません。
こんな水本桂が、そしてそのファミリーが、私は大好きなのです。
そんなこんなで、AFTERNOON PIANONNO、来て下さったみなさまのおかげさまで、とても楽しい会になりました。
古い絆の再確認と、新しい絆のめばえがありました。たくさんのエネルギーをいただきました。涙ももらいました。歳とると本当に涙もろくなりますね。
みなさま、本当にありがとうございました。
最後に、裏方で頑張ってくださったみなさま。
リハーサルの午前中、いろいろと会場設営を手伝ってくれたピアノクラブのちーたんさん、じゅんちゃん。演奏者なのに重い荷物たくさん運んでくれて、ありがとうございました。
同じく午前中から来ていただき、照明の調整をしていただいた、19thCLUBのカマキチさん。ありがとうございました。来年はぜひ演奏にもご参加いただけますよう、よろしくお願いいたします!
子供用のペダルを快くお貸しくださり楽譜立てやペダルの移動やプログラム折り込みなど手伝ってくださったRaRaさん、ありがとうございました。
持ち寄りのお菓子などたくさん持ってきて下さった皆様、ありがとうございました。ほんとに壮観でした。また、自主的に配膳してくださり、本当に助かりました。重ねてありがとうございました。
お花をいただいたBOBさん、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
遠いところから来てくださり、素晴らしいセンスのタイトル看板を描いてくれたピアノクラブのM.Mさん。ありがとうございました。
子供コーナーで地味に子供のお相手をしていてくださった、かちゃんさん、アヤカちゃんパパ、その他のみなさま、ありがとうございました。
最初から最後までカメラ片手にスナップを撮り続けてくれた、ろいこさん。素晴らしい写真ができました。タイミング、構図ともにプロ級です!本当にありがとうございました。ろいこさんにお願いして本当に良かったです。
そして、事前から場所取りや宿泊調整や備品調達など、裏方として本当に細かいところに気をまわしてくれた、私の妻に、感謝したいと思います。
最後に、快く19thCLUBのご参加をいただけたこと。本当に、感謝しております。ピアノクラブだけでは、この演奏会は成り立ちませんでした。ZERKIN=Sさん、RaRaさん、カマキチさん、そしてRaRa教室、NPO法人ファザーリングジャパンの皆様に、深く感謝しております。
もし、この会がまた来年も守谷で催せるなら、またお声をかけさせてください。また来年同じように楽しい空間を共有できますように、祈っています。
文章:ユング
写真:ろいこ