自分ユングは今回なかなか「人前で弾く、舞台に上がる」というレベルまでテンションを上げられず、今年はもういいや、と諦めかけていました。そんな中で、守谷のこの集まりにエントリくださる皆様の連絡メッセを読んでいるうちに、自分の間違いに気づかされました。手前勝手な思い違いかもしれませんが、演奏を披露してくださる皆様、聴きに来てくださる皆様、きっとひとりひとりに音楽の神様がついていて、神様が守谷におつかわしくださってるんかもしれん、そう思えるのがしみじみ嬉しくて仕方がないのでした。
その宴からもう3週間近くたちました。遅くなりましたが、私ユングが生あるいはDVDで聴いて感じたことどもを、自分のことはめいっぱい棚に上げ、皆様への感謝の気持ちをこめて、ここに記しておきたいと思います。
当日、台風が来ていて天気が微妙だったのですが、無事に晴れました。今回は調律なし。1週間前のリハーサルで弾いた感じ、狂いもあるけどなんとかなるだろ、という程度だったので、現状のまま14時過ぎに本番開始。以下、一筆ですが所感を演奏順に。演奏者のお名前はイニシャルにしてあります。
★★★ 第1部 ★★★
●K家オールスター
米津玄師 Lemon
今回2年ぶりにパパも弾き語りで家族の歌で参加してくださいました。久保田さんちはなんといっても太陽のような明るいパワフルさ。パパの弾き語りと、ママ&子供たち3人のボーカルで、紅白でも流れた米津玄師のLemonを家族力で歌いきってくださいました。K家の、緊張とかうまく弾けるか上手に歌えるかといった雑念とは無縁のこの世界が私は大好きです。What music!! 毎回楽しみにしています。
♥S.Kちゃん
ジョン・トンプソン てじなのめいじん
ジョン・トンプソン がちょうとかえる
岡本敏明 どじょっこふなっこ
S.Kちゃんはソロでは初めての登場です。懐かしい子供向けの3曲。とつとつとマイペースに弾いてくれました。K家のお子さんたちはみんな自由でマイペースで堂々としてますけれども、この子はその中でも迫力というよりは繊細さを備えているような気がしました。来年はどんな演奏になるんでしょうか。楽しみです。
♥Y.Kちゃん
ケーラー ドイツ民謡
北村俊彦 ブラック・ホール
K家の真ん中のお姉さん。ソロに加えて、K家のリコーダーとパーカッションを従えてピアノ伴奏を、いいリズムをキープしてやってくれました。上のお姉さんもそうですが、まあ音がしっかり出ていて指がしっかりしていて、安心して聞いていられます。スタッカートもスフォルツァンドもいい感じでした。まっすぐな演奏でした。
♥H.Kちゃん
中村八大 上を向いて歩こう
久石譲 君をのせて
この子は弾き語りが得意で、小さい頃から果敢にアタックしていました。今回はなんと、坂本九の名曲、上を向いて歩こう。なぜこの歌を選んだのかとても興味が湧くところですが、聴いてみると。オリジナルとはペースも声も当然違うんですけど、声の伸びが素晴らしくて、真っ直ぐどこまでも伸びていく天使のような美しい声は、この歌はこんな清らかな歌になるんだ、と驚いたのでした。いやほんと、素晴らしい演奏でした。そして、K家のお子さん3人の演奏を、パパとママと御祖母様が、温かいまなざしで見守っておられるのが印象的でした。K家の皆さんにはいつも、音楽とはなにかを教わっている気がします。ありがとうございます。
♣M.Oくん
ブルグミュラー バラード
ブルグミュラーの有名な曲を弾いてくれました。よく知られている曲ですから、聞いているみんなの耳も肥えています。演奏は、来てほしいところでバシッと来る、細い指なんだけど、強い音がしっかり出ていてダイナミック。これはお母さん譲りでしょうか。このままピアノを好きでいつづけて、どんどん難曲に挑んでいってほしいと思います。
♥M.Kちゃん
エルガー 威風堂々
威風堂々、ピアノよりオケで聴くことの方が多いですが、ピアノで弾くと全然印象が違いました。広々とした原っぱに空から光のカーテンが降りてきて、ひんやりした清澄な風が吹きました。こんな風にM.Kちゃんが感じているかどうかは知りませんが、私の心にはそう伝わりました。ちょっと大人びた素敵な演奏でした。
♥M.Mさん
スクリャービン ソナタ4番 Op.30 第1,2楽章
昔々、たしか1993年の夏、札幌は琴似パトスホールのベーゼンドルファーで、Y.Oさんの演でこの曲を聴きました。当時私はクラシックをほとんど知らなかったので、世の中にはこんな素敵なジャズのようなクラシックがあるんやなあとぼんやり思ってました。Y.Oさんの演奏はパワフルで緻密でした。そして26年の歳月が流れ、今回、札幌から1000km離れたログハウスのほっこりした空気の中で聴くM.Mさんの演奏は、大味だけど楽しそうで、曲への愛情に満ちあふれて、聴いている私も一緒に嬉しくなってしまいました。世の中いろんな音楽があって楽譜があって作曲者の思いがありますけど、演奏者の思いというのもとても大切な要素ですよね。M.Mさんの演奏にはいつも作曲者プラスアルファのワクワクがあって、聴いている人に夢を与えてくれます。これからもずっと、そのワクワクを持ち続けてほしいと心から思います。
★★★ 第2部 ★★★
●O家ブラザーズ
シューベルト 子守歌
O家の次男I.Oくんがギターで、鍵盤ハーモニカの弟M.Oくんと一緒に子守唄。去年はたしか二人でコントで参加してくれましたが、今年は楽器でデビューしてくれました。ギター、めっちゃ似合います。ぽつぽつと歩くような、のんびりほっこりした気持ちになる演奏。本人はいっぱい間違えたと言ってましたけど、なんでなんで、十分上手だったし、曲からそれっぽい雰囲気がしっかり感じられました。また来年も聴きたいな。
♥K.Mちゃん
キャサリン・ロリン 不思議なユニコーン
ギロックの曲の中では女の子が好んでよく弾くユニコーン。私はこの曲大好きです。ひととき夢の世界に行きました。藍色の星空を飛んで駆けていく幻獣が見えるような気がしました。ここは夢の世界?もしかして前のシューベルト子守唄と繋がってるんちゃうかと思ってしまいました。ペダルワークも上手で、この曲の不思議さを上手に表現できていました。きっとK.Mちゃんもこの曲好きなんでしょうね。
♣Y.Oさん
ドビュッシー エチュード10番
いやもうほんま、ごめん、マジでわからへん。初めて聴く曲でしたが、それにしても、どうにも怪しげで掴みどころがなく不気味な感じが、Y.Oさんらしさですよね。なんでこの曲選んだん?と聞いてもきっと、「いやあ、好きだから」と答えるに決まってますが、私はこの演奏を聴いていて、数学のめっちゃ難解な数式を専門用語バリバリちりばめてわかりにくく説明されて頭に????が並んでいるような状況に陥りました。いやもう、正直に言わしてもらうと、ただただ、難しく怪しかったです(笑)でもきっと、Y.Oさんは私にはわからない何かを理解してて、楽しみながら表現してるんだろうな。私にそれがわかる日が来るかどうかわかりませんが、それまで彼にはこの怪し系をずっと貫いていってほしいと思います。
♥M.Kさん
Neru & z'5 病名は恋だった
弾き語りではなくピアノソロでした。私はこの曲を知りませんが、気のせいかな、歌声が聞こえたような錯覚を感じまして。もしかしたら小声で歌ってたのかもしれませんが、それだけメロディがちゃんと出てて、ピアノソロでもしっかりとピアノを歌わせてたんやろなと思いました。どんどん上手になっていきます。ぜひピアノを好きなまま続けていってほしいなと思いました。
●S&M Family
ディズニーメドレー
S家のH.Sちゃん、K.Sさんと、K.Sさんの教え子のK.Mちゃんファミリーのディズニー。もう定番です。今年はメドレーでいろんなディズニーの歌を連弾プラスアルファでやってくれました。聞き覚えのある歌が出ると嬉しいですよね。途中からは鍵盤ハーモニカが加わって、3人連弾や鈴パーカッション!夢の園気分をゆったり味わわせてもらいました。これ、メドレーの楽譜があるんかな。もしかしたらK.Sさんの編曲かもしれません。メドレーの順番になにかストーリーや意味があるのかも。そして、弾いてくれた3人娘の頭の花飾りがかわいすぎて聴衆の心をまとめて持って行ってしまいましたとさ(笑)
♣ユング
ドビュッシー 子供の領分より「雪が踊っている」
ショパン エチュード Op.10-9
自分のピアノどころか音楽を聴くことすら気が向かない日々でした。今回は今の自分の状態がそのまま出たという感触でしたが、弾いてよかったと思います。音楽を奏でつつ、実はその中に人生が織り込まれてます。奏でることは生きること、それを皆様に教わりました。次はなにを弾こっかな!
♥H.Sちゃん
ギロック フランス人形
樹原涼子 好きなこと
昔々、「ゆきだるまつくーろー」とかわい過ぎる声で歌って聴衆を悶絶させていた、あの小さかったH.Sちゃんが、気がつけばもう3年生。奏でる音楽は、可愛らしさはあの頃の歌声そのままに、正確さとしとやかさが加わって、もう立派におしゃまなお姉さん。樹原涼子の曲のささやかな装飾音、なんともええ感じです。こういう微妙な情景もちゃんと表現できる。子供が育つのはほんまにあっという間ですね。お母さんのように、楽しんで音楽を人生のそばに置き続けてほしいと心から思いました。
♥M.Oさん
ショパン スケルツォ1番
ファジル・サイ トルコ行進曲 ジャズ
1番は、ショパンのスケルツォの中で私が一番好きなナンバーです。あまりにも難しすぎてとてもやないけど自分で手を出す気にはなれませんが、これを音楽友達が実際に弾いているだけで、この場にいた甲斐があったと思えました。この曲の持つ、闇夜に光るナイフのような鋭さ、対照的に中間部の穏やかな川面を舟がゆったりと滑るような情景も、どれも本当に素晴らしくて、ああここにいて良かったなあとしみじみ想いながら聴きました。ジャズ風のモーツァルトは初めて聴く曲でしたが、重すぎるスケルツォからのギャップが良く、ある意味疲れを癒されるように楽しく、第二部をスカッとしめてくれました。
★★★ 第3部 ★★★
●劇団sana
原作:にしのあきひろ 演出:さいとうますみ えんとつ町のプペル・プロローグと歌
初めてアフタヌーンピアノンノにご参加いただいた劇団sanaさんの朗読劇です。タブレットのスライドショーに合わせて台詞を何人かで朗読していくんですが、途中にはピアノの伴奏や歌が加わって世界が膨らんでいきました。終わった後に、ひとつのとても素敵な世界を見せてもらったような、ありがたいと感じる心が残るような、じわりと心に染み入る朗読劇でした。それにしても、演出のさいとうさんの声の張りのすばらしさが際立っていて、ぼそぼそ喋りの私は心から羨ましいと思った(笑)
♥S.Kさん
ベートーベン ソナタ テンペスト第三楽章
ベートーベンが好きなS.Kさん、有名なテンペストを弾いてくださいました。相当弾きこんだと思いますが、強弱のダイナミックレンジが広く、また途中からアクセルを踏んでガンガン乗って、聴いてる方が心配になるくらいの迫力でした。みんながよく知ってる定番の曲を弾くというのは、粗も見えやすくて勇気が要ります。でも毎回そうした挑戦をされ、毎回見事に決めてくださるS.Kさんの安定感はすごいです。
♣A.Oくん
小川新 アニメ東方メドレー
Youtubeで子供たちの間に流行しているボカロの曲を自分でバイオリン+ピアノでメドレー編曲。音楽街道まっしぐらの若きホープです。バイオリンも見るたびに上達していると感じましたが、なにより嬉しいのは、子供たちが音楽をより好きになって自ら新たな挑戦をしてる姿。今回はなんとプログラム構成までやってのけました。この先どこまで自分の音楽世界を広げていくのか楽しみでたまりません。
♣M.Oさん
ショパン マズルカ Op67-2、Op67-3
M.Oさんがショパンを弾くのを私は大学時代から今まで一度も見たことがありませんでした。M.Oさんは時々こういう天啓を受けた行動をされます。私の中では、メジャーどころにあえて距離を置き、大衆が普段顧みることのないマイナーな不思議世界の曲を好んで弾いてるイメージでした。しかし、年をふることで心の中やものの見え方聴こえ方が変わっていくことはあるような気がいたします。今映像で見ると、背景のログハウス中庭の草原が風に揺れている情景がびっくりするほど音楽に合ってます。これもやはり天啓のなせる業でしょうか。
ちなみに映画「この世界の片隅に」の解説が演奏より長かったのはご愛嬌です!
●I.Kさん、S.Kさん、N.Mさん
松任谷由実 リフレインが叫んでる
I.Kさんのお声がけで生まれたこのユニット、3回目かな?S.KさんとN.Mさんの声質が近いせいだと思いますが、昭和を思い出させるハモリがなんとも懐かしく感じました。男声パートがあったら私も参加したいところです。そしてできればアフターで歌声喫茶よろしく、もっといろんな昭和平成の歌をやってほしかった。でもこのユニット、次やる歌がすでに決まっているようなので、また来年の楽しみにとっておきましょう!
♣Y.Oさん
シューマン ダヴィッド同盟舞曲集Op.6より抜粋(第1,4,5,6,8,10,14,13,17,18曲)
カプースチン 10のバガテル Op.59より第1曲
カプースチン プレリュード Op.53-23
アルベニス イベリア第2巻より 第6曲トゥリアーナ
北海道から1000km空を飛んで駆けつけてくれました。ほんまにありがたいことです。それだけでも感謝感激です。Y.Oさんはいつも演奏に妥協がなく、今回は鉄板のオオトリでした。今回弾いた曲、実は一曲たりとも私ユングが知っているものがなく、やむなくシューマンとカプースチンについてちょっとググって調べたことを踏まえて書かしてもらいます。間違ってたら指摘してね。
シューマンのダヴィッド同盟舞曲。シューマンはベートーベンより少し後のドイツの人。リストやワグナーといった当時ブイブイいわしていた派閥に対抗し、彼のもとを訪れた若き美形ブラームスにその希望を見出して音楽の表舞台に引き出した張本人です。また作曲だけでなく自ら音楽雑誌を発行して文筆活動にもいそしんでいました。
彼の晩年はノイローゼ、自殺未遂など決して明るいもんやなかったですけど、この曲は彼がまだ未来に希望をもって音楽と向き合えてたころ、そして当代随一と言われた美人ピアニスト、クララと結婚したころの、ノリにノっていた時期に作曲した、まさにやる気満々、あるいは心豊かな情景が見える曲集です、たぶん。
ちなみにダヴィッド同盟とは、そんな名前の政治同盟が実在したわけではなく、恐らく単にシューマンが共に音楽を語り合える、志を同じくする仲間たちを勝手に「ダヴィッド同盟」と言ってたぽいです。そんなところもなんとなくシューマンらしいですよね。
シューマンて、自分よりも自分が志向する音楽を大事にするような滅私奉公なところがあるような気がします。シューマンの曲、なんやろなあ、古いような、新しいような、自分勝手なような、ハチャメチャなような、でも縛られてるような。Y.Oさんがどういうイメージでこの曲を捉えてたのかわかりませんけど、こうしてあらためて聴いてみると、「僕はこれからこういう音楽をやっていきたいんだよ」というシューマンの声が聞こえてきそうな、そんな曲なんかな、と感じます。てどんなんやねん(笑)
そしてカプースチン、Op.53-23が素敵ですねえ。実は最初はプログラムに入れてなかったんですが、Youtubeで聴いたらあまりに素敵やったんで、私がぜひ入れてーとリクエストしたら、答えてくれました!ジャズ風、リズミカルでスピーディ。DVDのOP/EDにも使わせていただきました。カプースチンはロシアの作曲家で、まだご存命です。これもググって知りました。なんでこんな珍しい曲知ってるんやろ彼は!
~終わりに~
そんなこんなで、つたない文章ですが、私の偽らざる感想を形にしてみました。読んで気分を害されたらごめんなさい。きっとこの後、M.Oさんがちゃんとした所感を今年も寄せてくださると期待して、私の文章のダメさ加減は堪忍してください。
今年もみなさまからたくさんの感動や不思議や気づきをもらいました。ありがとうございました。音楽がそこにあることがすでに有り難いことだとしみじみ思いました。楽しい時も苦しいときも音楽を傍に置いておこうと。
そして最後に。冒頭と締めでユングが司会をやりましたが、DVDであらためて見たら、聞くに堪えないぼそぼそ&冗長&クソ長い独り言のような喋り。もうこれは公害やろ・・・・来年はもう少し短くハキハキとできるように、頑張ります!