アフタヌーン・ピアノンノ2024、無事に終わりました。
生きていれば人生いろいろなことがあり、辛いこと楽しいこと驚くことがいっぱい。演奏会を楽しむということも決して当たり前ではないのだなと、コロナで思い知りましたが、そんな中で、楽しく終えられたのは、有り難いことだったなあと、すべてのことに感謝するばかりです。
ブルーレイとDVDの焼き、発送も終わり、これが今年の最後の作業と思うと、少し寂しくもありますが、つたない文章ではありますが、演奏曲すべてに私が個人的に感じたことどもを簡単に綴ってまいります。
演奏者氏名はイニシャルにしております。
●第1部
K.Mさん ブルグミュラー アラベスク
ピアノ教室に通うっていれば必ず弾くことになる、有名な曲です。
難しい左手も頑張り、しっかりリズムも取れて、最後まできっちりノーミスで弾ききりました。
堂々たるトップバッターでした。
H.Nさん マイカバル ワルツ
カラフルピーチ OnParty!
ワルツが特に良かったですね。この年齢でもうきれいな音を出せている。
そのうちペダルも使って、もっときれいな旋律を聞かせてくれそうな気がします。
2曲目は最近流行の歌。ベースとメロディのバランスも良く、しっかり最後まで弾けました。
S.Sさん モーツァルト トルコ行進曲
のだめカンタービレ・最終楽章(前編)でのだめが進級試験で弾いていた曲です。
誰もが知っている有名な曲ですが、巷で一般的によく弾かれるのは抜粋か簡単バージョン。
フルスペックの楽譜はかなり難易度が高く、今回それに挑戦した度胸と、最後まで止まらず安定して弾ききった努力が素晴らしい。よくやりました。
ちなみに私も昔挑戦しましたが、譜読みで諦めました(涙)
Y.Sさん ギロック ウィンナーワルツ
ギロック、素敵な曲がいっぱいありますよね。これもそんな中の一つ。
子供用のペダルを使って、手の交差もばっちり。
曲の可愛らしさをしっかり表現できていました。素敵でした。
M.Iさん 田中カレン 「星のどうぶつたち」より 「きりん」
スカルラッティ ソナタ K.159L104ハ長調
星のどうぶつたちは、いろんな動物をモチーフに曲に仕上げたシリーズですが、ほかにも素敵な曲がいっぱいあって、個人的にこのきりんもそんなうちの1つで、聞いていて嬉しくなりました。親子でじゃれあっている可愛らしいきりんが見えたような気がしました。
スカルラッティもそんな流れのまま、可愛らしい演奏でした。
Y.Sさん・M.Oさん 黒須克彦 夢をかなえてドラえもん
先ほどのお子さんが今度は先生と連弾です。ベースが先生、生徒さんがメロディで歌っていました。
たぶん誰もが知っているこの歌。選曲もいいですね。きっと聴いていたみんなも心の中で歌っていたのではないでしょうか。
楽しい連弾でした。
Y.Oさん サティ ノクチュルヌ 第1番
今年はパリ五輪と重なり、なにかと巷ではフランスが熱い日々でした。そんな中、サティを選んだのが五輪からなのかはわかりませんが、なんとも物憂げでゆったりサティですが、途中から少し強めのリズムが出てくるところから空気が少し変わり、風が吹いていました。
その後また物憂い旋律に戻るのですが、終わり方も唐突で、サティらしい、なんとも不思議な世界でした。
Y.Mさん・K.Sさん リチャード・ロジャース ドレミの歌
HansZimmer/KlausBadelt/GeoffreyZanelli 彼こそが海賊
出演者の中では最年少。でも舞台度胸はずば抜けてナンバーワンでした。
先生がベース、生徒さんはメロディ部分担当。迷いのないしっかりしたタッチで、先生に音量で全然負けず、ノーミスで弾ききりました。
なんなら先生をリードするぞくらいの気迫を感じました。かっこいい海賊でした!
K.Sさん ドビュッシー ベルガマスク組曲より 月の光
月の光、よく弾かれる曲です。個人的にこの曲大好きで、曲目の中に見つけて嬉しかったです。
非常に繊細で流れるような強弱のうねりをしっかりコントロールしていて、月下の美しい世界を表現されていました。聴衆みんな、ひととき別世界に連れていかれたようにシンと聴き入っていました。ブラボーです。
M.Mさん シューマン 幻想曲Op.17第3楽章
今年も岩手から足を運んでくださいました。それだけでも涙がちょちょぎれます。
そして今回は若い世代へのエールをこめて演奏したとのこと。
こんな安らぐ世界があるのかと思うくらい、ひととき完全に脱力して、ゆーったりとただ流れ来る音符に身を任せていました。
余談ですが、この方は演奏する時の姿勢が素晴らしいです。体にムダな力がどこにも入っていないのですね。
この人の音楽との向き合い方を象徴しているような、天衣無縫、ただただ素敵な演奏でした。
●第2部
K.Mさん・T.Mさん AlanMenken UndertheSea
パパと娘さんの連弾です。毎回出てくださっているご家族さんですが、パパがお喋りする姿を誰も今まで見たことがなく、演奏前に喋る姿がみんなサプライズでした。
パパさんがバックリズム、娘さんがメロディを歌っていました。息がぴったりなんですね、ほんとに。とってもリズミカルで、ずれたらアウトなんですが、最後までほとんどずれずに。
いっぱい楽しく練習したのだろうと思います。その様子が思い浮かぶような演奏でした。
終わった後には娘さんからの先生へのあいさつ。スポーツに打ち込むため最後のピアノ演奏会になる生徒さんから先生に花束サプライズ。
先生はうるうる。聴衆のみんなもうるうるでした。お疲れさま。スポーツ頑張ってね!
K.Oさん ブルグミュラー マーチ
ウォルピスカーター 天ノ弱
遠く宮城から来てくれました。岩手のM.Mさんの甥っ子さんです。
小さいのにこんな指が回って飛躍してまったくノーミスで安定感抜群、しっかりとこの曲を弾ききって、聴衆がマジか的な静けさに。
いやー、すごい子がいるもんだ、と驚きました。そしてなんと、プログラムにはないけど弾きたい曲があるので飛び入りでもう1曲弾いてくれました。
そちらは自分で耳コピした流行歌。ポップスの耳コピって、特にリズム表現が難しくてダサくなることが多いんですが、彼の耳コピは左手のリズムがしっかり速く音量もしっかり出ていて、疾走感に満ちていました。
小2でこんなことが?目の前で起きていたことがちょっと信じられないような、聴衆の心を全部持っていく名演でした。ブラボー!!
Y.Nさん・H.Nさん 行進曲メドレー(おもちゃの兵隊の行進~トルコ行進曲)
兄と妹連弾です。いいですねえ兄妹やはり息が合いますね。リズムがまったくずれずに。
そして、このメドレーのつなぎの構成も自然でいいですね。
とっても仲良し感が感じられる、ほっとする演奏でした。
E.Uさん バルトーク・ベーラ ルーマニア民族舞曲
アラム・ハチャトゥリアン トッカータ 変ホ長調
ピアノクラブ時代から抜群の安定感をキープしていた人だったので、まあそうだろうとは思いましたが、やはりとんでもない演奏でした。
いやー、ほんとこの人はすご過ぎる。アフタヌーン・ピアノンノに聴衆としてずっと来てくださっていたのですが今までは演奏者側には回らず、聴き専だったので忘れかけていましたが、今回満を持して能力全開放でした。バルトークもハチャトゥリアンも、怒涛の勢いで聴衆の心すべて持って行ってしまいました。超絶ブラボーです。
A.Mさん 飯田俊明 沁みる夜汽車
加古隆 グラン・ボヤージュ
司会の私はNHK2曲でした。グラン・ボヤージュはNHK「映像の世紀バタフライエフェクト」の挿入曲です。完成度はともかく好きな曲が弾けたので悔いはなく嬉しかったです。
S.Sさん・K.Sさん 大野克夫 名探偵コナンメインテーマ
母娘の親子四手連弾です。みんな知ってるアニメのテーマです。
こういうみんなが知ってるポップス・アニメ系は、再現度が命で、なかなかリスキーですが、母がベース、娘さんがメロディで、メインの旋律以外の装飾パッセージも再現。ほぼ原曲のイメージで、速度もほぼ同じ。いやいや見事でした。
聴衆の皆さんの心にきっと江戸川コナンと毛利蘭が現れたのではないでしょうか。最後のオクターブ連打もばっちりでした!聴いていて爽快でした!!
Y.Mさん ショパン スケルツォ2番
子供のころから参加してくれていたバイオリンのA.Oくんが、ピアノのお友達を連れてきてくださいました。
若い人たちの世界が広がっていくのを見るのは嬉しいものです。しかも、ショパンのスケルツォ2番とか、やばいです。
相当やっていなければそもそもこの曲に挑戦などしないでしょうが、この難曲を、ほぼノーミスで最後まで弾ききる体力と迫力。
若さと熱量がすごい。この先も立ち止まらずにどんどん難しい曲に挑戦していってほしいです。
●第3部
W.Oさん ショパン ワルツKKⅣb-11
あいみょん 愛の花
ショパンのワルツの遺作。決して表現が簡単ではない曲ですが、この曲のもの悲しさをしっかり表現できていました。
この子とてもきれいな音を出すんですね。濁りがなく、自分の音を自分でちゃんと聴いています。
そして、あいみょんの歌、これかなり心に残りました。好きな曲なのでしょうか。そんな思いが伝わってくるような名演でした。
Y.Nさん カバレフスキー ウクライナ民謡による7つの陽気な変奏曲
民謡です。どこか懐かしいような、故郷の土や草や木の匂いがする、田舎の人々が踊っているような、そんな情景でしょうか。私には見えました。
表情変わって少し悲し気なシーンあり、そして変化をもたらすリズム。強弱の制御にも心を砕いて、とても表現力を感じる演奏でした。素晴らしかったです。
A.Oさん(Vn)・T.Sさん(Viola)・Y.Mさん(P) 加古隆 パリは燃えているか
NHKのドキュメンタリー「映像の世紀 バタフライエフェクト」のメインテーマです。
今回、バイオリンのA.Oくんがビオラのお友達を連れてきてくださり、先のピアノのY.Mさんと3人でアンサンブルを披露してくださいました!!
ビオラはまだ始めて間もないそうですが、ベースをしっかり踏み固めるピアノと先導するバイオリンに導かれて、しっかり弾けていたと思います。
この曲、哀しいけど、いい曲です。若い人たちがこの曲を選んだのも、なにか意味がある気がいたしました。
M.Oさん ラヴェル 水の戯れ
ベートーヴェン ソナタ「月光」第3楽章
ピアノ教室の先生です。やはり今年はフランスが多い気がします。個人的には彼女にはベートーヴェンなどドイツのイメージを持っていたのですが、なんでもできちゃうんですね。ラヴェルは有名なのはボレロですが、ピアノ曲もいっぱいあって、どれも絵画の世界の中のように美しく流麗で、感情ではなく情景という感じでしょうか。水の戯れ。静かな池の水面に広がる波紋のさやけさ、川の流れのきらめきと美しさ。
情景豊かな世界に引き込んでくれました。
そして、飛び入り追加で始まったのはなんと月光第3楽章。これぞ、という彼女のイメージですね。いつでも弾けるくらいに指に沁みついているのだと思います。天晴な演奏でした。
A.Oさん(Vn)・M.Oさん(P) 松本文紀 刻ト詩(ときとうた)
この曲、私は初めて聞きました。疾走感に満ちた曲。調べると、「サクラノ刻~櫻の森の下を歩む~」というタイトルのアニメなのかゲームなのか?の主題歌のようでした。
バイオリンほんとうに上手になりましたね。そして、この曲はきっと彼が自分で耳コピして、ピアノ+バイオリンで編曲したのでしょう。
音楽好きそのままに、音楽の世界を自分で広げて楽しんでいる姿を見ていると、しみじみ嬉しくなりました。今年から学生のオケに入られたとのこと。
これからももっともっと世界を広げて、音楽とともに歩んでいってほしいなあと願ってやみません。
M.Iさん リスト 超絶技巧練習曲 第4番「マゼッパ」ニ短調S139-4
ラヴェル 鏡より第4曲「道化師の朝の歌」
リストの超絶技巧を生演奏で聴くことなどそうそうあることではなく、しかもほぼノーミスで、ピアノという楽器の性能の限界まで引き出す、ダイナミックレンジを端から端まで使い切る、途方もない演奏でした。
今年から音大の院に進まれた彼女は、子供のころからただものではない並外れた技術と表現力を見せてくださっていたのですが、今ではもうセミプロの領域にあって、技術どうこうというところを超えているように思います。
眼をつむって聞くと、練習曲というより、それ自体でなにかをイメージした作品ぽいなあと思ったら、調べたらユーゴ―の叙事詩「マゼッパ」をイメージした標題音楽なんですね。
そして、なんと、アンコールでラヴェルの鏡!これは嬉しかったです。
ラヴェル、やっぱりフランスすごく今回多かったと思います。指が鍵盤の上で飛び跳ねていました。音符の道化師が歌って踊っていました。
最後の挨拶までとにかくカッコよかった。ブラボー!!!
Y.Mさん ねこふんじゃった
なんと、司会の私にとっても最後にものすごいサプライズがありました。
演奏会も終わりに近づいたころ、最年少の子が、みずから私のところに来て、「飛び入りでもう1曲弾きたい」と言いました。
そこでトリの1つ前はどうかと提案したら、「最後がいい」と自分の意志でオオトリを望みました。
この度胸はただものではなく、ぜひ望みをかなえてあげねばということで、今年のアフタヌーン・ピアノンノの最後を締めくくっていただきました。
猫ふんじゃった、誰もが知る有名なこの曲を、最後までしっかりノーミスで弾ききってくれました。圧巻です。マンモスブラボー!!
終わってみると、この演奏会が本当にあったのか?夢だったのではないか?と思うくらいに遠い夢の中の出来事だったような錯覚におちいります。それくらい、楽しく、驚きにあふれ、心豊かで、そして安らぐひとときでした。
あの場にいることができて、皆様の演奏が聴けて、こんな嬉しいことに今年も立ち会えた幸運に感謝しかありません。
来てくださったみなさま、写真のH.Kさん、PAのI.Kさん、プログラムのA.Oさん、タイトル画のM.Mさん、本当にありがとうございました。
そしてまた来年、あの場所がありますように。
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